第10回 新時代の 「創造」

2013年6月10日
こんにちは。シブサワ・コウです。 今日は信長の 「野望の新作」 についてお話したいと思います。「信長の野望」はおかげさまで30周年を迎えることができました。1983年3月30日に発売した初代「信長の野望」は、発売当初は一部のゲームファンに支持されましたが、じわじわと口コミで広がっていき、年末には大ヒット作になったという思い出があります。
あれから30年間、コーエーテクモの主力タイトルの一つである 「信長の野望」 は、まさに、お客様に育てていただいたタイトルです。
今日は、30年を振り返ってみたいと思います。

初代 『信長の野望』 1983年

1980年当時、私は光栄マイコンシステムというパソコンショップを経営していました。故郷である栃木県足利市の自宅にて、洋間をオフィス代わりに、BASICなどでゲームを開発していました。 その頃のゲームといえば、ゲームセンターで楽しむ業務用のものと、パソコン向けの2種類でしたが、いずれにおいてもアクションゲーム、特に反射神経を競うタイプのゲームが主流でした。 しかし、私自身、30代に差し掛かっていたこともあり、忙しさが要求されるアクションゲームよりも、戦略や戦術を楽しむ思考型のゲームが作りたいと考えました。

世界観については、“歴史”を題材にしようと自然に決まりました。歴史、特に司馬遼太郎さんの歴史小説が好きで、織田信長にとても憧れていたからです。
信長は、乱世にあって新しい時代を切り開いていったところが大きな魅力です。戦場での戦い方はもちろん、領国の運営や組織のあり方など、信長はすべてに革新的な手法を取り入れていました。
そうしたことを頭に思い浮かべながら、「信長の野望」の世界観やゲームシステムを固めていきました。

30年前の “光栄” のオフィスは足利市の郊外にありました。

代の『信長の野望』が口コミで広がり、ロングセラーになっていったことは冒頭でも触れました。
その頃の私は、プログラミングなどゲームソフトの開発作業だけでなく、広告・宣伝や、完成した商品の発送等も、1人で行っていました。 ゲームを購入されたお客様からのお問い合わせ対応も、私自身が担当しておりましたが、電話や手紙で 『信長の野望』 に対する様々なご意見が寄せられてきました。

「東海や関東、近畿だけでなく、全国様々な地域でプレイしたい」
「登場する武将の数を増やしてほしい」
「私の持っているパソコンで動作する製品を出してほしい」

こうしたお客様のご要望に応えることが、シリーズ2作目の 『信長の野望・全国版』、同3作目の『信長の野望・戦国群雄伝』 へとつながり、商品ラインナップが広がっていきました。 ちなみに、初代 『信長の野望』 は、様々なプラットフォームへ対応していくうちに、計38機種のパソコンに移植した記憶があります。テクノロジーの進歩に合わせ、ゲームの表現もどんどんグレードアップしていきました。

『信長の野望・戦国群雄伝』 1988年   


また、30年が経つなかで、「信長の野望」 は様々な分野にもチャレンジし、オンラインゲームやソーシャルゲームへとジャンル展開していきました。 いずれも、お客様に広く楽しんでいただくためです。 “戦国の世を生きる”をテーマに人と人とのつながりを楽しむ 『信長の野望Online』、そして、ねこ武将が戦国の世で大活躍する『のぶニャがの野望』など、斬新な発想を持つ商品が生まれています。
2012年は 『ポケモン+(プラス)ノブナガの野望』、2013年には 『AKB48の野望』 と、様々なコラボレーション作品も生まれており、「信長の野望」 の世界は次々と広がってきました。

『ポケモン+ノブナガの野望』
2012.3.17 発売
 『AKB48の野望』 完成発表会
2012.12.26


うした中、5月14日に当社会議ホールにて 「信長の野望」 シリーズのメインストリームである最新作の発表をすることができました。
「信長の野望」 30周年を記念する、栄えあるシリーズ第14作のタイトルは 『信長の野望・創造』 です。


戦国時代、日本全国を統一して新しい時代を作ることを夢見た織田信長は、“創造” と “破壊” を繰り返して時代を駆け抜けました。 その 「創造」 の部分に焦点を当てた新しいゲームを、というのがタイトルの由来です。

コンセプトは 「新時代の創造」。 織田信長が成し遂げられなかった天下布武、そして新しい世界の創造をプレイヤーが目指していきます。 「リアリティ」 「ダイナミック」 「ドラマティック」 という3つのキーワードを軸に開発を進めていますが、手応えを非常に強く感じています。 新規のお客様はもちろん、少しシリーズから離れていた方にも楽しんでいただける内容にしますので、ご期待ください。

 『信長の野望・創造』 ゲームイメージ

 『信長の野望・創造』 戦闘イメージ

≫『信長の野望・創造』 公式サイト
※ゲーム画面は開発中のものです。

後に、私のシミュレーションゲームに対する思いを書いて今回の締めとしましょう。

私がゲームを作り始めたのは1981年です。 『川中島の戦い』 という、武田信玄と上杉謙信の戦いを描いたシミュレーションゲームが第1作でした。 その頃から一貫して、シミュレーションゲームの面白さは 「疑似体験を楽しむ」 ところにあると思っています。
戦国乱世にかぎらず、競馬シミュレーション、経営シミュレーションや恋愛シミュレーションにも当てはまることです。 さまざまな疑似体験をすることで、楽しみの幅が広がります。このシミュレーションの楽しさは、ゲームの1ジャンルとして、これからもずっと続くでしょう。
もちろん、「信長の野望」 はシミュレーションゲームの王道であり続けたいと思っています。

「信長の野望」 最新作発表会 2013.5.14

数多くのゲーム制作に関わったので、「ゲーム作りで苦労したことは?」と聞かれることがよくあります。 でも、苦労と感じたことはひとつもありません。
ゲームを遊ぶことは楽しいのですが、作ることはもっと楽しいと思います。
これからも、お客様に広く楽しんでいただけるゲームを目指し、まずは『信長の野望・創造』が素晴らしい作品になるように努めていきたいと思います。

次回を、どうぞお楽しみに。