第六回:夢の始まり…/レミー



今日は最高の日です。
この喜びをどう伝えれば良いのか…。
様々な感情が頭を駆け巡り、
的確な言葉が見当たりません。


 


僕たちは長かった洋上の生活を終え、
アメリカの大地に降り立ち、
遂に“ヌーベルフランス”に辿り着きました。
皆が感動のあまり、興奮し、狂喜しました。
老いも若きも、男も女も関係なく、
喜びを爆発させていました。


そんな狂乱の最中、僕の目に映るものがありました。少し離れたところで静かに喜びを分かち合うふたり。
一人はレイラさん、そしてもう一人は、僕たちを襲った海賊“ナーヒド”です。


カリブでは、彼のために航海を断念せざるを得ない事態にまで陥りました。
彼の手で開拓団のメンバーが連れ去られ、レイラさんは彼を説得するために開拓団を抜けたのです。最終的には、ある航海者のおかげでメンバーは無事救出され、拘束されていたレイラさんも解放されました。

レイラさんは全てを話してくれました。
「ナーヒドは自ら味わった裏切りへの復讐のため悪事を働いていた。彼の呪縛を解いてあげたい、そして彼と一緒にヌーベルフランスで穏やかに暮らしたい」と。その言葉に疑いの余地はありません。
僕たちの答えは、彼が開拓団にいることからもおわかりでしょう。


 




さて、明日からはいよいよ農園の開拓が始まります。しばらくはクリストファー先生やディミトリスさんたち3人組が、手伝ってくれることになりました。


 


土の感触から、この地でも麦や野菜はちゃんと根付いてくれると確信しています。
果てしなく広いこの土地は、僕たちに無限の夢と
可能性を与えてくれるようでした。
「生涯を賭けて、ここを世界一の農園にしたい」
大きな夢ですが、この地を眺めていると
それもかなう気がしてきました。


 


この地の将来を想像しているうち、
ふと故郷の風景が重なりました。
ささやかだけどしっかりと作物が育つ畑。
作業にいそしむ両親と僕。無邪気に駆け回る妹…。
「よく頑張ったね」と、母のねぎらいの声が聞こえたような気がしました。

ある日、アゾレスで僕たちを助けてくれた航海者さんに「この日を最後に、もう泣きはしない」と約束しました。でも今日だけは、その約束を守り切れないかもしれません…。


 


開拓団のメンバーは、それぞれの目的のため
新たな旅を始めることになります。


アレンさんは沿岸調査のため再び海へ。
グロリアさんは大陸を巡り地図を作るそうです。
ダミアン爺さんは次の開拓団の準備に向け、
マルセイユに帰るのだとか。


この地への到達は、確かに一つの大仕事でした。
しかし、僕たちが見据えているのはその先にある夢。それが少し現実味を帯びてきただけです。
だからこそ、ここで立ち止まるわけにはいきません。

夢を果たすための旅は、
まさに今始まったばかりなのです!


 

フランスのとある地方の小さな農家の長男。両親と小さな妹がいる。
今回、王室支援の下で“新たなる航海”に旅立つ。家族に楽をさせてあげたい一念で、大農園を作ることを夢見ている。