今日は最高の日です。
        この喜びをどう伝えれば良いのか…。
        様々な感情が頭を駆け巡り、
		的確な言葉が見当たりません。
 
僕たちは長かった洋上の生活を終え、
		アメリカの大地に降り立ち、
		遂に“ヌーベルフランス”に辿り着きました。
        皆が感動のあまり、興奮し、狂喜しました。
        老いも若きも、男も女も関係なく、
		喜びを爆発させていました。
そんな狂乱の最中、僕の目に映るものがありました。少し離れたところで静かに喜びを分かち合うふたり。
        一人はレイラさん、そしてもう一人は、僕たちを襲った海賊“ナーヒド”です。
カリブでは、彼のために航海を断念せざるを得ない事態にまで陥りました。
		彼の手で開拓団のメンバーが連れ去られ、レイラさんは彼を説得するために開拓団を抜けたのです。最終的には、ある航海者のおかげでメンバーは無事救出され、拘束されていたレイラさんも解放されました。
        レイラさんは全てを話してくれました。
        「ナーヒドは自ら味わった裏切りへの復讐のため悪事を働いていた。彼の呪縛を解いてあげたい、そして彼と一緒にヌーベルフランスで穏やかに暮らしたい」と。その言葉に疑いの余地はありません。
        僕たちの答えは、彼が開拓団にいることからもおわかりでしょう。
 
さて、明日からはいよいよ農園の開拓が始まります。しばらくはクリストファー先生やディミトリスさんたち3人組が、手伝ってくれることになりました。
 
土の感触から、この地でも麦や野菜はちゃんと根付いてくれると確信しています。
		果てしなく広いこの土地は、僕たちに無限の夢と
		可能性を与えてくれるようでした。
		「生涯を賭けて、ここを世界一の農園にしたい」
		大きな夢ですが、この地を眺めていると
		それもかなう気がしてきました。
 
この地の将来を想像しているうち、
		ふと故郷の風景が重なりました。
		ささやかだけどしっかりと作物が育つ畑。
		作業にいそしむ両親と僕。無邪気に駆け回る妹…。
		「よく頑張ったね」と、母のねぎらいの声が聞こえたような気がしました。
        
        ある日、アゾレスで僕たちを助けてくれた航海者さんに「この日を最後に、もう泣きはしない」と約束しました。でも今日だけは、その約束を守り切れないかもしれません…。
 
開拓団のメンバーは、それぞれの目的のため
		新たな旅を始めることになります。
        
アレンさんは沿岸調査のため再び海へ。
		グロリアさんは大陸を巡り地図を作るそうです。
		ダミアン爺さんは次の開拓団の準備に向け、
		マルセイユに帰るのだとか。
この地への到達は、確かに一つの大仕事でした。
		しかし、僕たちが見据えているのはその先にある夢。それが少し現実味を帯びてきただけです。
		だからこそ、ここで立ち止まるわけにはいきません。
        
		夢を果たすための旅は、
		まさに今始まったばかりなのです!
 
フランスのとある地方の小さな農家の長男。両親と小さな妹がいる。
今回、王室支援の下で“新たなる航海”に旅立つ。家族に楽をさせてあげたい一念で、大農園を作ることを夢見ている。