第四回:災厄/アレン

その日はいつも通り甲板で
“暇つぶし”を楽しんでいた。
ふと見上げると
空は暗雲に覆われ、
小雨が降り出していた。
──嵐の前兆。

僕は急いで船室で休んで
いた奴らを呼び寄せ、
帆を畳む準備をさせた。
ダミアン爺さんも素早い。
すぐにアゾレスへ引き返す
よう、皆に指示を出した。


最善は尽くした。
だが、ようやくアゾレスが
見えたところで波が暴れ出す。
残念ながら街を前にして碇を
下ろさざるを得ない。
浸水への対応に追われ、
寝ずの日々が続いた。


──嵐は過ぎ去った。

だが船はボロボロ、僕らも満身創痍。
判断力が欠如していた。
一刻も早くアゾレスへ。そんな焦りがミスを誘った。
いつの間にか船はアゾレスの港を大きく離れ、
島の切り立った崖に衝突していた。
衝撃でクリストファー先生が海に放り出される。
誰もが最悪の事態を予想した。だが抱えていた
荷物が水に浮き、先生は命拾いした。

船は先端が完全に破壊され、そのまま崖に沿うように沈んで行く。限界の体を奮い立たせ、船が海に飲まれる前に何とか脱出した。


 









生きた心地はしなかったが、
幸いなことに開拓団は全員無事だ。
ビョルンは「家宝のかなづちが身代わりになった」と嘆いていた。

今、僕はアゾレスで日々を過ごしている。
正直、やり切れない思いだ。さてあと何日、
ここで暇を潰せばいいんだろうか……。


 

遠洋探検家という職業柄、海の上での生活が長いためか“暇つぶし”と称して、よく釣りに興じている。
楽天的な性格だが、請け負った仕事はきっちりとこなす主義だ。