第三回:新年/ダミアン爺さん

 







ヌーベルフランス開拓団は
船の上で新年を迎えた。

いただいた物資で少しだけ贅沢をし、
レティシアとジョナサン、
そしてバルバラの連れてきた
調理人が作った料理で、
仲間たちの労をねぎらった。


 








我が開拓団は、ヌーベルフランスへ移住する者たちの集まりである。故に生粋の船乗りはそれほど多くない。船に乗り慣れていない者もいる。
特にレミーにとっては初めての船旅だ。



そのレミーだが、仕事の手つきにはまだ未熟さが見えるものの、船酔いもせず体は丈夫そのものだ。何より持ち前の明朗さで皆を引っ張っていく存在になりつつある(本人にその自覚はないようだが)。


マルセイユで初めて出会った頃は、人見知りが激しく、話をすれば故郷への未練ばかり。本当にこの開拓団でやっていけるのか一番心配していた。
私も長く船の上で仕事をしてきたが、これほどの変貌を見せた者はそうはいなかった。



さて、私の人物評はこのくらいにして、そろそろ仕事に戻ろう。アゾレスでフランス王室の者に報告を届ける手はずになっているのだ。ほろ酔いで今すぐにでも床に就きたいところだが、明日までに書き上げねばならない書類がある。
この歳になって徹夜はしたくないのだがね。


 

開拓団の最長老。50年近く航海者として生きてきた。物腰が柔らかく偉ぶる素振りもない。いまは開拓団やその協力者への報酬などについて、王室と粘り強く交渉を重ねてくれている最中で、その手腕が高く評価されている。