10月28日 マルセイユにて――

ふらふらと散歩しながら祭りを眺めるのが日課になってきた
今日この頃。なんと、カリブの妖精たちが僕の前に舞い降りた。
相変わらずかわいらしい。周囲に幸せを振りまいてくれる。
彼女たちも祭りに参加しに来たんだろうか。祭り好きな彼女たちなら、
この大規模な祭りは欠かすことが出来ないだろう。

彼女たちとの再会をよろこんでいると、ポーリーヌさんがやってきた。
初めて会ったときのように不機嫌だ。
どうもポーリーヌさんは、彼女たちとソリが合わないらしい。
髪飾りのことでケンカをしたりと、些細なことで衝突しあう。
彼女たちに仲良くしてもらいたくて、
先日やったゲームを一緒に やろうと提案した。
もちろん、周りにいた祭りの参加者たちともね。
僕とサウラ姉妹とポーリーヌさん、
そして飛び入り参加の航海者2名で、合計6人がゲームに参加した。
参加者は円陣を組み、周りの航海者の方々からの声援を受け、
気持ちを引き締めて臨むことが出来た。
2回目のテーマは「食べられる交易品」。
簡単だと思いタカをくくっていると、痛い目を見る羽目になって しまった。
僕は航海者じゃないし、商人でもないから、思った以上に的確な答えが出せない。
料理は得意だから、その食材からヒントを得て答えていったが…。
なんとか負けることはなかったけれど、ぎりぎりまで追い込まれた。
さすがは新進気鋭の航海者たちといったところか。




ポーリーヌさんと姉妹の心を通わせることはできなかったが、ゲーム自体は非常に盛り上がった。姉妹も楽しんでくれたみたいだ。ゲームが終わったところで姉妹のおじいさん、ホセさんが仕事を終えてやってきた。姉妹を連れて近隣の街を巡るらしい。
僕はその案内人として彼らについていくことにした。



遠くなるマルセイユを眺めながら、僕は思った。
ワインも、海も、空も、いろいろな表情を見せる。祭りに参加する人たちの人生も、ひとつとして同じものはない。
僕はどれだけの詩をうたっていけるんだろう。

人に与えられた時間はあまりに短すぎる。

 

君の髪が舞い 鼻先をくすぐった
君は風に文句を言う 日差しの強い午後

差し出した僕の手をするりとかわして 君は走り出す
風が運んできた ぶどう酒の香り高い祭り場へ

君の顔を見れずに頷いた 別れのあの日
君の髪から香るぶどう

今ならわかるよ あれは決別ではなく始まり
二人で夢を追うと決めた 幼い約束

 ぶどう酒をあおる 心地よい酔いが体を巡る
微かに体を包むぬくもりは 酔いのせいではないのだろう