エンジュが運んだサクリアの力で、聖獣の宮殿の外側の氷は解け、建物の中に入れるようになりました。
宮殿の奥で、エンジュは見知らぬ青年と出会います。
その面影は、エンジュが生まれてはじめて恋し、あっさりと振られた相手によく似ていました。みじめな失恋によって彼女は自分に自信をなくし、今なお心の痛手を引きずっていたのです。
神鳥の聖地に戻っても青年のことが頭を離れず、エンジュは自分のなかの止められない激情に苦しみます。
一方、エンジュへの恋心を自覚しはじめていたゼフェルは、彼女の様子がおかしいのに気づきます。忘れられない、今でも好きな相手がいるのだ…と知ると、彼もまた落ちこみ、悩むのでした。
そして、苦手なジュリアスに頭を下げてまで許可をもらい、エンジュに同行して聖獣の聖地へ出かけるゼフェル。宮殿の中で地震にあい、大きな氷塊が崩れ落ちてきて、二人は離ればなれになってしまいます。
そこでエンジュは、あの青年と再会しました。
「お前が、伝説のエトワールか」
彼の口から出た言葉に、エンジュは大きな衝撃を受け、問いただします。「あなたは誰、なぜ私を知ってるの…?」
答えることなく青年が立ち去ったあと、泣きくずれるエンジュを見つけ、呆然とするゼフェル。
その頃、神鳥の宮殿ではガベルの石板が新たな予言の文字を浮かび上がらせていました。
「女王の目覚めをさまたげる者」――。
 
  青年への想いを隠すため、神鳥の守護聖たちに問われても、あいまいな答えしかできないエンジュ。青年が「女王の目覚めをさまたげる者」かもしれないと疑いながらも、会いたい気持ちがおさえられず、聖獣の聖地へ通います。
いたいたしく思いながらも、会えばエンジュを問いつめたり傷つけてしまうゼフェル。いつしか、鋼のサクリアをうまくコントロールできなくなっていました。
そのころ、王立研究院では不穏な兆候を同時に察知していました。ひとつは、聖獣の宇宙での天変地異の増加。そして、神鳥の宇宙では、鋼のサクリアに変調が出ていました。ゼフェルが恋に苦しむことを知るルヴァは、彼を心配します。
聖獣の宇宙で、鋼のサクリアが乱れた惑星を救うために出かけるエンジュ。そこでは火山が噴火し、想像以上の荒廃が進んでいました。
そして、あの青年がまたエンジュの前に現れたのです。惑星の惨状が青年のしわざだと思いこみ、「あなたを許さない!」と怒りにふるえるエンジュでしたが、その時――
巨大な怪物が、二人の前に出現します。
聖地で石板は輝き、告げるのでした。
「女王の目覚めをさまたげし者…それすなわちサクリアの精霊…大いなる壁となり、人類の前に立ちはだかる…」
青年は精霊に闘いをいどみますが、岩が崩れ、二人ははるか崖下へと落ちていくのでした…。
 
  青年がかばってくれたおかげで、エンジュは無事でした。しかし彼は足に大けがを負っていました。
「私を助けてくれた…命を賭けて」
アリオスと名乗った青年を手当てしながら、エンジュの想いは急速に高ぶっていきます。
熱にうなされ、エンジュの手を握って「エリス…」と呼ぶアリオス。
そのとき、聖獣の女王の幻が出現し、エンジュに教えます。
アリオスは、女王がもっとも信頼する協力者であると。
そして、エリスとは彼がかつて失った恋人の名であることを。
エンジュは、かなわないと知りながらも、アリオスに「好き…」と想いをぶつけます。
彼の答えは
「伝説のエトワールとして、俺はお前を守る。それ以上の気持ちはない」
と、完全に突き放したものでした。過去を引きずったエンジュの恋心は、ここでもまた報われることはなかったのです。
そのとき、サクリアの精霊がエンジュたちを見つけ、襲いかかってきました。
神鳥の聖地からオスカーとゼフェルが駆けつけますが、ゼフェルは旧知のアリオスを見て、彼がエンジュの想う相手だと気づいてしまいます。
アリオスはエンジュを連れて特殊能力の空間移動で安全な場所へ逃れると、エンジュを置いて立ち去りました。
後から聖地へ戻ったゼフェルは、もはやサクリアを操れないことをジュリアスたちに知られます。守護聖としての力がなくなれば、聖地を去る運命にあるのです。
それをエンジュも聞いていました。
「ゼフェル様は悪くない。私のせいなんです」と、苦しみながら訴えるエンジュを、ゼフェルは
「おめーは、アリオスの中に昔の恋を見てるだけなんだ!」
と、強く抱きしめ、好きだと告げるのでした。
しかし、アリオスに受け入れられなかった失意と、使命の重さのために折れる寸前だったエンジュの心は、ゼフェルからの告白で混乱し、ついに制御不能となってしまいます。
一通の置き手紙を残し、エンジュは聖地から姿を消しました――。
 
  エンジュがいなくなった聖地で、守護聖たちは改めて彼女のことを考えます。
伝説のエトワールの使命の重さと、普通の少女としての感情の間で押しつぶされてしまったエンジュに、何故もっと早く気づいてやれなかったのかと。
決意も新たに彼女を探しだそうとするジュリアスたちに対し、クラヴィスは否定的でした。「今は、すべてを忘れ、さまようがいい…」と、傷ついたエンジュに心のうちで呼びかけるのでした。
そしてゼフェルは、エンジュへの告白に失敗したショックから、館に閉じこもっていました。
ルヴァが訪れ、「後悔するような言葉なら、どうしてエンジュに気持ちを伝えたのですか」と、静かにさとします。そして、「私も、エンジュのことが好きです」と。
入れ替わりにオスカーが部屋へ入り、ゼフェルの胸ぐらをつかんで「告げた言葉の責任を取れ!」と強い言葉で叱咤し、いま苦しんでいるエンジュのことを思い出させます。
立ち直ったゼフェルはランディ、オリヴィエとともに、エンジュがいる港町へと向かいます。
エンジュは夕暮れの浜辺にいました。
使命を投げ出してしまったことを、聖地のみんな、聖獣の宇宙の人々に謝りながら、けれどもう一歩も動けず、戻ることもできずに、ただ「ふるさとに帰りたい」とつぶやくのでした。
そんなエンジュの前に、神鳥の女王が幻となって現れます。
女王はエンジュと同じ涙を流し、
「ひとりに戻るというのなら、あなたはすべてを忘れられますか?」
と問いかけます。
エンジュは聖地で過ごした日々を想い、守護聖やロザリアたちがどれだけ自分を助けてくれたか――自分はひとりではなかったことを想いだします。
そのエンジュの想いは聖地にまで届き、守護聖ひとりひとりと、しっかりと心を通じ合ったのです。
エンジュのもとへ辿りつくゼフェル。
「おめーのコト好きだって言ったコト、オレはもう後悔しねー」
お互いに立ち直った二人が微笑みながら手を取りあうと、まばゆい光が体を包み、ゼフェルはサクリアの力を取り戻していました。
オリヴィエとランディもエンジュに温かい言葉を贈り、4人は急ぎ聖地へ戻ってゆくのでした。
 
  聖獣の宇宙では、サクリアの精霊が力をふるい、人類を滅ぼそうとしていました。
守護聖のなかでも繊細な心をもつリュミエールとマルセルの二人は、精霊の怒りや悲しみの感情を感じとることができました。
サクリアの精霊は、守護聖と同じくサクリアを司る存在として聖獣の宇宙に現れました。そして、後から生まれた人類が欲望のままに宇宙を汚し、やがてはサクリアを司る存在になることを憎んで、それゆえに滅ぼそうとしている、というのです。
二人は精霊の想いを理解しながらも、聖獣の宇宙の人々を救いたいと決意します。
そのとき、エンジュたちが聖地に戻りました。クラヴィスは、戻ってくることはないと思っていたエンジュの強さに驚かされ、彼もまたエンジュの力になると約束するのでした。
こうして守護聖たちとエンジュの心はひとつになり、9つのサクリアの力がエンジュのブレスレットに与えられると、ブレスレットはバトンの形に変化しました。
神鳥の女王は、エンジュにたったひとりで聖獣の宇宙へ行くようにと告げます。聖獣の女王は、エンジュに未来を託しているのだから、と。
「忘れないで。私とロザリアと、ここにいる9人の守護聖たちは、いつもあなたとともにいることを…」
エンジュはバトンを手に、次元回廊を渡って聖獣の聖地へおもむきます。
彼女の前に現れたのはアリオス。
切なさをのみこんで、「使命をやりとげるつもりです!」と、ふっきれた表情でエンジュは告げます。
そこに、力を増したサクリアの精霊が出現し、宮殿で眠る女王を狙います。
アリオスは剣を抜き、闘いますが、精霊の威力はすさまじく、異空間へと飛ばされてしまいます。
残されたエンジュに迫る、サクリアの精霊。
恐怖にすくみながらも、「わたしは人間のことを信じます!」と訴えるエンジュ。
神鳥の女王や守護聖たちがともにいることを想い、祈りをこめたバトンから大きな力があふれて、精霊を打ち砕きます。
精霊は「お前一人なら、何もできぬものを! 奴らと引き離す!!」と叫び、ちりぢりになって消えてゆきました。
そして宮殿に眠る聖獣の女王の姿も、かき消すように消え――。
まばゆい光が聖獣の聖地のうえに降りそそぎ、目覚めるとエンジュはひとりでした。
二つの宇宙をつなぐ次元回廊は断たれ、エンジュが神鳥の宇宙へ帰る道はなくなっていました。
衝撃をうける守護聖たち。神鳥の女王は、おごそかに告げます。
「始まるのです…運命が定めた、新たなる試練が…」

 (「恋する天使アンジェリーク〜かがやきの明日〜」へ/つづく)

 
 
【STORY I(1〜4話)】
【STORY II(5〜8話)】
 
 
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