ラブφサミット
     
  (正門前広場)

「なんつーか、相当フツーの子だったな」
エミリオ

エミリオは小さく肩をすくめた。

「うちのトップ、あれでほんっとーに大丈夫なのか?」

エミリオを制するように、リヒャルトが言を継ぐ。

「“鷹”の跡継ぎとしての教育をなにも受けていないのは最初からわかっていたことだろう」
「お、なんだか楽しそーだな」
リヒャルト

「まあな。――それでこそ、教育のしがいがあるというものだ」

眼鏡の奥で、切れ長の瞳が鈍く光った。


(スケートリンク)

人気のないスケートリンク。

リンクサイドに上がるアレクセイを、たったひとりの観客――ジャン=マリーの拍手が出迎える。

ジャン=マリー

「ああ、アリョーシャ。今日もすばらしいね」
「そうか? ならし程度だったんだが」
「でも今日の僕はだめだ。彼女の…ジャンヌの姿がいつまでも離れない」
(…ジャンヌ?)

アレクセイは、ジャンヌ・ダルクのことだろうか、
と思ったがあえて問わないことにする。

「本当に、奇跡が起きてしまったんだ。ああ、なんて罪なジャンヌ…!」
「…感動したのはわかった。が、本人には言うな」
アレクセイ

アレクセイはそっと右肩に手をやった。

(“家なんて意識したことなかった”か…)

(ロイの自宅)
「あの子、おもしろい子だったね。
突然“鷹”の家に振り回されることになってかわいそうな気もしたんだけど、案外度胸がありそうだ――
血筋かな、やっぱり」
ウィリアム

黒いラブラドール・レトリバー――クッキーの相手をしながら、
ウィリアムは親友に話しかけた。

「さあな。まあ、血筋か資質かはどっちでもいいだろ。気に入ったんなら仲良くしてやればいい」
「あれ、自分は興味ないとでも言いたげだね」
「そう聞こえたか?」
「まあ、あんなパフォーマンスをしておいてそれはないか。
――ああ、そうだ。彼女と仲良くしたいなら、明日謝っておくといいよ。
こいつが体当たりしたの、実はあれが2回目だったんだ」
「は?」

ロイはウィリアムにかまわれて、ごきげんにしている愛犬に視線を落とした。

ロイ

「そうか。お前、今日はもう遊んでやらないからな」

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