エミリオは小さく肩をすくめた。
エミリオを制するように、リヒャルトが言を継ぐ。
眼鏡の奥で、切れ長の瞳が鈍く光った。
人気のないスケートリンク。
リンクサイドに上がるアレクセイを、たったひとりの観客――ジャン=マリーの拍手が出迎える。
アレクセイは、ジャンヌ・ダルクのことだろうか、と思ったがあえて問わないことにする。
アレクセイはそっと右肩に手をやった。
黒いラブラドール・レトリバー――クッキーの相手をしながら、ウィリアムは親友に話しかけた。
ロイはウィリアムにかまわれて、ごきげんにしている愛犬に視線を落とした。