ラブφサミット
     
 

まったく予想もしないセリフに、全身固まってしまう。

でも、凍りついたのはあたしだけじゃなくって。
ギャラリーも、ロトφのみんなも、言葉がない。

だけど、やっぱり、その言葉を向けられた彼が一番青ざめてしまっていた。

「…も、申しわけございませんでした!」

ようやっとしぼりだすように謝って、ものすごい勢いで頭を下げる。

それを認めると、今度はギャラリーに向かって言い放った。

「お前たちも部外者だとか、派閥だとか、
つまんねえことでいちいち騒いでんじゃねえよ。
時間の無駄だ」

その言葉をきっかけに、一気に生徒たちが散っていく。
波が引くように、これまでのことはいったいなんだったのってくらい、あっさり。

そしてけっきょく、ロトφの6人、それからシンシアとあたし――とクッキーだけが残った。

「…さて」

人波が引いたのを見計らうようにして、ロイの腕があたしから離れた。

ロイ

「驚かせて悪かったな。おとなしくしててくれて助かった」
「う、ううん。ありがとう」

真正面に向き合い、いまさら顔が赤くなってくる。
まともに顔が見られない…!

それに気づいたのか、容赦なくツッコミが飛んでくる。

「念のため言っとくが、あれは芝居だ。真に受けるなよ」
「…!」

わかってるし…!
思わず反発するように顔を上げると。

――と。
あきれ顔が余裕の笑みに変わった。“それでいい”って言ってるみたいな。

~~~この人…!

リヒャルト

「失礼な物言いは止してもらおうか」

背後から、リヒャルトが怖い顔で詰め寄ってくる。

「なにが“気安く触るな”だ。気安く触っていたのはお前だ。
お前のことだ、この方が“鷹の姫”ととうに気づいていたんだろう」

それがなにか? というふうに、ロイは小さく肩をすくめた。

「不満言うくらいなら、お前がさっさと助けとけばよかったじゃねえか」

過ぎたことを言っても仕方ねえだろ。すっぱり切るようにリヒャルトをあしらう。

「じゃ、俺はこれで」

そのままするっと勝ち逃げしようとして。

「――ああ、そうだ」

ふとなにかを思い出したように、振り向く。

「どうして自分が“鷹の姫”だって言わなかった?
それだけであいつらを黙らせられたはずだ」
「――あ」
「…ひょっとして、気づいてなかったのかよ」

心底まったく思いつきもしなかった、という表情を読み取られ、軽くあきれられてしまう。

「だって、本当に今朝までなにも知らなかったんだよ。
そもそも家とか肩書きなんて意識したことなかったし…!」
ロイ

「ふうん、そう」

一生懸命弁解するあたしの頭をぽん、と叩いて。
ロイはそのまま立ち去ってしまった。

「なっ…!」
「わうー」

あっけにとられたリヒャルトを素通りするようにクッキーが駆けてく。

「じゃあ、俺もこれで。またね」

それを追いかけるように、ウィリアムさんも立ち去っていった。

「ジャンヌ、君と過ごす明日を迎えるために…名残惜しいけれど今日はお別れだよ」
「…じゃあ」

ジャン=マリーさんとアレクセイさん。まったく対照的な態度を示して去っていく。

さて、と、これまで成り行きを見守っていたシンシアが口を開く。

「寮までは私が案内するから、あなたたちもここでいいわ」
「そう? じゃ、オレもこれで! 気をつけて帰れよ!」

シンシアの提案をあっさり受け入れたエミリオとは逆に、リヒャルトは不服そう。

「鷹の長から彼女のお世話をまかされているのはわかるけれど…。
あなた、今日会ったばかりのレディの部屋に立ち入るつもり?
それも、もう少しで日も暮れようとしているときに」

これ以上食い下がっても、と思ったのか、リヒャルトは観念したように軽く息をついた。

「…では、私もこれで失礼いたします。
なにかお困りのことがありましたら、いつなりとご連絡ください」

そのまま、エミリオと一緒に立ち去っていく。

「じゃあ、私たちも行きましょう」
「うん、そうだね」

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