
オオマガドキの発生により恒久化した異界が「領域」であるのに対し、
強力な“鬼”の出現に伴って一時的に出現する「侵域」という異界が存在する。
強力な“鬼”の出現に伴って一時的に出現する「侵域」という異界が存在する。
古代の特徴を持った「侵域」。
黄金の雲海の中に、荒れ果てた石舞台が浮かぶ。彼方には神々の居所と見える神殿群を望むものの、聖なる気配は微塵もなく、ただ荒廃の風だけが吹き渡っている。

奈良・平安時代の特徴を持った「侵域」。
石化した巨大な蓮に囲まれ荒れ果てた寺院庭園が広がる。
かつて満々の水に壮麗な御堂の姿を映し、西方極楽浄土と称えられた姿は見る影もなく、黄昏の光の中に鬱々と沈み込んでいる。

戦国時代の特徴を持った「侵域」。
尽きることなく湧き出る溶岩が、滝となって流れ落ち、城内外を侵食している。
戦国の覇者が築いた武威の証は、もはや見る影もない。

江戸時代の特徴を持った「侵域」。
豪華絢爛な襖が見上げるばかりに立ち連なり、艶やかな奥の間を形作っている。
夜明かりに照らされて、襖がきらめく様は、一夜の夢のごとき妖しい美しさに満ちている。

