彼らの心に届いたか、僕にはわからない。
ただ、あのときみんなからもらった惜しみない拍手と、酌み交わした喜びの酒の味で、
僕は自然で幸福な感謝の気持ちでいっぱいになった。
…それで充分なのかもしれない。
彼らもまた波間をたゆたう。彼らの目的地はまだまだ遠いからだ。
僕も、風に流されていろいろなものを見よう。
僕の目的地もまだまだ遠いから。
風の向くままに旅をしてみよう。
今度は何処の街に着くだろう…
――そう、あのとき発表しなかった、お蔵入りの詩が一曲あるんだ。
戦いの詩――。僕の父を彷彿をさせてしまって、みんなには発表できなかった。
僕の父は、かつて騎士だったらしい。
今なにをしているのか、もしかしたら死んでしまっているのかもしれない。
僕の旅は、吟遊詩人としての旅でもあり、また彼の足跡を追う旅でもあるんだ。
もし彼が生きていて、僕を受け止めてくれるのなら――。
この詩を、贈ろうと思う。
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風の強い夕闇の中 彼らは誓った
「終わりない 旅になろうとも 海に出るは 生まれ出た運命」
固く握り合った拳に 落ちる涙は
別れの悲しみではなく 再会への希望
手にした不確かな地図 書き足される真実
この目で見て この耳で聞く
お前も同じものを見てきたのか――
どんなに困難でも けして負けはしない
強い向かい風も 荒れ狂う高波も
お前も同じものを越えたはずだから――
立ちはだかる戦艦 うなる砲台
乗り込む戦士たち 響く剣戟
生きるか死ぬかの 極限の戦い
傷だらけの船 傷ついた戦士たち
今生きている感謝と 声にならない叫び
「波よ答えてくれ 世界の果てに 俺の求めるものはあるのか――」
夜明けと共に 東に船影
見紛う事はない 懐かしい旗印
「波よ答えてくれ 俺はこの日のために生き延びたのだろう――」
――お話は 終わらない 栄光を求め海に挑む
時代の申し子たちの物語―― |
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