シンシアに言われるまま、あたしはゲストハウスの外に出ていた。
それも、ひとりきりで。
というのも、みんなゲストハウスに足止めを食ってしまったから。
さっきの不協和音の犯人は廊下にいたエミリオ。
勝手にくっついてきたはいいけど、ヒマを持てあましてサッカーボールで遊んでいたらしい。
それで、リヒャルトにパスしようとしたらスルーされて、飾ってあったツボを破壊してしまったとか。 (ツボ、いくらするんだろう…)
リヒャルトはそのとばっちり。連帯責任で片づけを手伝わされている。
シンシアはおじいちゃんに呼び止められてしまった。
(いったいなんの用なんだろう…)
戻ってきたら、寮へ案内してもらうことになっている。
このスキに逃げられないかと思ったけど、さっきの今なのでちょっと勇気が出ない。
だから、今のあたしにはすることもなくて。
所在なく、敷地をぶらぶらと歩くと、正門前の広場に出る。
連れてこられたときにも思ったことだけど、やっぱりとんでもない規模。
正門前広場から敷地全体を見回すと、それがいやというほどわかる。