ラブφサミット
     
 
「どうじゃ、みんな超セレブな“いけめん”ハーフじゃろ♪」

これだけおったら誰かひとりはヒットするじゃろ、とおじいちゃんはふんぞり返った。

たしかに、写真の中の男の子たちは、みんなけっこう…ううん、かなり格好いい。

タイプはひとりひとり違うけど、おそろしいほど整った顔をしてる。

セレブなことも、聞いた限りじゃまちがいない。

だけど、ツッコミどころが多すぎる。あやしすぎる。

どうにか切りくずして逃げられないかな…。

「どうしてこの人たちなんですか」
「どうしてって、ええじゃろハーフ♪ 国境を越えた愛の結晶じゃ~!」

と、ハーフ大好きっぽい発言。

え?

それだけ!?

おじいちゃんの趣味!?

堂々とドン引きしてしまったあたしをよそに、おじいちゃんはたたみかけてくる。

「おっと、なにも決め手はハーフだけというワケではないぞ!
ロトφの連中はいろいろと“すぺしゃる”なんじゃ」

また“ロトφ”…。

正直、昔のアイドルグループの名前みたいにしか聞こえない。

このおじいちゃんの推薦ってだけでも怪しいのに、なんていうか怪しさ倍増。

「あの、ロトφって…?」
「知らん。名づけたのはワシじゃないからのー。ま、そこはなんでもええじゃろ」
「?」
「大事なのは、世界中から有能な子女が集まるこの学校で
アイドル視されるくらいの有望株だってことじゃ!
ま、お前のこともワシの跡もまかすんじゃ。そのくらいでないとな~」

あ、なんか初めてまともなこと言った。ひょっとして、話せば通じる?

「でも、条件がそろっているからって、好きになれるとは限らないし」
「ほ? しかるべきムコを取らんとお前が跡を継ぐことになるが、それでええのんか?」

~~~今度は跡継ぎ話…。次から次へと巨大爆弾がぽいぽい出てきすぎだよ!

穏便にすませたかったけど、やっぱりダメだ。もう単刀直入にいこう。

「突然こんなところに連れてこられて、跡継ぎとか結婚とか言われても、正直納得できません。
申しわけありませんがお断りします。帰らせてください。失礼します」

早口言葉のように言ってのけ、ぺこっと一礼するが早いか、入り口へとUターン。

逃げるが勝ちだよ!

瞬間。

「逃げようったってそうはいかんぞ!」

背後で、ぱちんと指を鳴らす音がして。

「っ!!」

あたしの行く手をさえぎるように、黒いかたまりが天井から降ってきた。

黒ずくめの大男がふたり…SP?

なに? ドラマ? これ現実!?

見上げたサングラスが無機質な光を反射して、正直とんでもない圧迫感。

「入寮準備はおろか、転校手続きもぜーんぶ終わっとる。いまさら無駄な抵抗じゃぞ」

勝ち誇ったような自信満々の顔が…正直憎たらしい。

今すぐには逃げられないとしても、そのうちタイミングを見計らって…。

「今後も逃げようなんて思わんことじゃ。助けを呼んでもムダ。
ワシはし~っかりチェックしとるからの」

あたしの考えを見透かしたようなセリフにぎくっとする。

「もし逃げた場合は…楽しい楽しいバツゲーム、じゃ」

おじいちゃんは、ちら、とあたしの背後のSPに目をやった。

大男の顔がくっ、とこちらを向く。

…無理。ムリ!

「それから――ムコ選びをちゃんとやらんかった場合も、バツゲームじゃ~」

ほっほっほっ、と高笑い。

(ありえない…)

もはや言葉も出ないあたしに自分の勝利を確信したのか、これまでの追い詰めモードから一転、ふふん、と浮かれ出す。

「今日のところはおとなしく寮に入ってゆっくりするといい。
ここの寮はの、超一流ホテルも真っ青なスイートルーム仕様だからなんでもござれじゃぞ。
もちろんメイドもついておるしな♪」

ダメだ…。

がっくり肩を落としたあたしを救うように、凛とした涼やかな女の子の声がした。

「“鷹の長”、どうかそのくらいに」

この部屋とひと続きになっている隣室から現れた彼女に、あたしは目を奪われた。


シンシア

ローズグレーの緩やかな巻き髪。

ラベンダーの瞳。

白く透きとおる肌。

バラ色の頬。

まるでお人形さんのような、清楚な超絶美少女。いかにも生粋のお嬢さまという気品あるいでたち。

「お声がけいただく前に、失礼いたしました」

そう言って、おじいちゃんと学園長に礼の姿勢をとると、学園長が彼女を紹介してくれた。

「彼女はシンシアといってね。とても優秀で心優しい生徒なのですよ。
これからの学園生活のサポート役は彼女が適任と判断し、お願いしました」
「初めまして。シンシア・美月・ウィンストンです。どうぞ仲良くしてくださいね」

ふわり、とほほえむ。それはもう、まるで花が咲きこぼれるかのように。

(オアシス…!)

どう考えても大ピンチなこの状況で、初めて味方ができるかも!

「あの、あたし」

ガシャーーン!

壮大な不協和音が、上向きかけたあたしの気持ちをぼっきり折った。それはもう見事に。

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