成歴1903年。
新大陸の空へ、有人飛行機が飛び立った。
―それは、人類が翼を手に入れた瞬間だった。
だが、ヨーロッパ大陸内で対立の一途をたどる国家間の現状に、飛行機は『兵器』としての価値を見いだされてしまう。
1914年に始まった大陸大戦。
世界に大きな傷を残して停戦となった後も、大陸は多くの国々が互いに睨み合う小康状態にあった。
そして、成歴1923年。
大陸内の一国、ユクトランド王国の王都で自動車整備工として働く主人公一家。
老いてはいるが、『整備の神』とも言われる腕前を持つ父アントニー。
父手ずからの指導を受けた主人公エリカも、弱冠17歳にして優秀な整備士へと成長していた。
ある日、ユクトランド王国軍から要請が来る。
アントニーに、戦後設立された陸軍航空小隊の整備兵になれと言うのだ。
年老いた父に無理をさせたくない、と、主人公は「父の代わりに自分が行く」と言い出す。
派遣されたのは、隣国シュレスベルク帝国との国境近く、ロランドの街にある基地。
最新鋭の飛行機を有する独立航空小隊、通称『ロビュ小隊』だった。
やってきた主人公に対し、ある者は『女』と侮り、ある者は妙な期待を寄せ、ある者は『子供』であることに落胆する……。
誰一人として自分を『一人前の整備士』として扱わない事実を前に、主人公は毅然と口を開く。
私は整備兵としてここに来たんです。だから、早く仕事をさせてください」