隣国を訪れてから数週間後、我が国が隣国に攻める形で合戦が始まっていた。
以前は転生などを行う救済役として積極的に参加していが、隣国の姿を見てしまった今は、どうもその気にならない。私は自分で作った「茶器」や「入れ物」を両替前で売って時を過ごしていた。
それにしても妙だ。辺りを見回すと、合戦中だというのに高レベルの人が結構多い。気になって門前の御触書を見に行ってみた。なんだ、これは。合戦の戦果が、我が国はすでに数万なのに対して、隣国はまだ3桁の前半なのだ。
御触書に集まっている人々が口々に語っていた。
「お隣さん、国力回復に専念する戦略をとったみたいだな」
「国力半分以上は確保しているからねぇ」
「この手でこられると厄介ですね」


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イメージ なるほど、それで我が国からも合戦場に赴く人が少ないのか。
まてよ、とすると、隣国は国全体で実に見事に意思統一が図られていることになる。同じ思いを共有している者同士だからこそ形となった、生きるための努力の結晶。私は今までにない親しみを隣国の人々に感じ始めていた。この結束の様を見てみたい。
不思議な穏やかさに包まれて私は御触書を後にし、隣国へと向かった。

再び隣国へ足を踏み入れた私は、やはり冷たい視線で迎えられた。しかし、狩りで死んでしまった人を転生させたことがきっかけで徒党に加わり、国力回復のための手助けをさせていただけるようになった。
達成報告に必要な品は全てこの国の人に譲り、彼らは合戦後にそれをまとめて達成報告するために溜め込む。
僧の中心的技能である回復はもちろんのこと、直接打撃を行う盾役の侍や鍛冶屋に「生命吸収」を施したり、ある時は薙刀を振るって直接打撃、またある時は「紅蓮」や「凍気」などの術攻撃をしかけたりと、僧の持つ特性である万能性を発揮して、様々な人達の狩りを助ける。そんな日々を過ごしていた。
そして合戦の最終日を迎えた。

「隣国の諸君に告げる! この合戦をもってこの国は滅びる! 身の安全を図るため、今のうちに出奔をしておくことをお勧めする。これは長年刃を交えてきた諸君に対する敬意のしるしとして受け取って欲しい。繰り返す! 今のうちに出奔をしておくことをお勧めする!」
合戦もあと数分で終わるという時間になった頃、大声でこんな声が響き渡った。この国が滅びる? バカな。この国の国力は半分を越えている。合戦に負けても、滅びることはあり得ない。
「合戦に勝っても我々を倒せなかった腹いせじゃないか?」
「次に備えて国力回復を行える人間を少しでも減らそうって魂胆だろうな。そうはいくか」
大声を耳にした隣国の人々は、口々にそう語っていた。だが私はイヤな予感がした。 その大声の主が屯所兵狩りをしていた人のものだったからだ。
念のため私は国勢を確認してみた。なんてことだ! 国力が半分を切っている! いつの間に!? 一体どうして!? その時、誰かからの大声が響いた。
「緊急事態! 国力が半分を切っている! 国力関連の達成報告が可能な人は、今すぐ達成報告してください! そうでないとこの国が、この国が!」
合戦は我が国の勝利に終わった。いつものように。

ただ一つ違っていたのは、この敗北で隣国が滅亡したことだった。
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解説  
  • 敵3体にダメージを与える攻撃術「紅蓮」「凍気」、直接攻撃によって与えたダメージに応じて体力が回復する「生命吸収」は、いずれも目録「密教」で修得する。
  • 「密教」は相手の気合・体力回復付与をうち消す喝破など、相手にダメージを与える術で構成されており、術による攻撃役を目指すのであればこの目録を修得することになる。
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