半兵衛スチル

両兵衛と主人公の出会いから、さかのぼること数年。
官兵衛は織田軍の躍進に惹かれ、信長との謁見を望んでいた。
織田家家臣の秀吉に口利きを願うため、彼がいる長浜を訪れた官兵衛だが…。

官兵衛「……降ってきたか」

羽柴の邸まであと少しというところで、頬に冷たいしずくが落ちてきた。
と思うと、またたく間に地面が黒々染まっていく。

官兵衛(急いだほうがいい。足場が悪くならないうちに…)

小走りで橋にさしかかった時、突然強い風に煽られた。
つぶてのような雨粒を受け、思わずまぶたを閉じる。

風はすぐにおさまった。
だからこそ官兵衛は、開いた目に飛びこんできた光景を疑った。

官兵衛(なんだ? いつの間にか、目の前に人が…。今の今まで、俺ひとりだったはずなのに──)

よもや、天から舞い降りたとでもいうのだろうか。
そうだと言われても驚かない気がした。
面前に現れた人物は、それほどに幽玄な美しさをまとっていたのだ。

半兵衛「……お客人」

雨に煙ってもなお、冴えて響く声。

半兵衛「西から、雨雲を連れてまいられましたね」