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「TYPE-MOONエースVOL.15」特別企画 「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」一部公開!

「TYPE-MOONエースVOL.15」特別企画 「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」

発売中の雑誌「TYPE-MOONエースVOL.15」内で実現した特別企画、「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」について、特別に許可をいただき、全6ページの対談のうち2ページ分のみ公開いたします。
2大ゲームクリエイターの語る『Fate/Samurai Remnant』。ぜひご覧ください。

「TYPE-MOONエースVOL.15」特別企画 「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」

(シブサワ・コウが『Fate/Samurai Remnant』のテストプレイを既に200時間近く行っているという発言を受けて)

奈須
組織のトップが自社の作品をこれだけやりこんでいるとなると、いやがうえにも開発チームも気合が入ります。シブサワさんからいろいろなご意見を出されるのは、たいへん頼もしいし、それ以上に恐い。ちょっとでも作り込みが甘い部分、迷いを抱えながら作っている部分は、的確に突かれるわけですから。開発チームががんばる→面白いからシブサワさんがたくさん遊ぶ→さらに開発チームががんばる……というWin-Winの関係が成立するんです。
――『Fate/SR』はシブサワさんの監修のもと、たしかなクオリティで発売されるというわけですね。一方、奈須さんはどのような形で制作に携わっているのでしょうか。
奈須
『Fate/SR』のお話をいただいた時点で、本来はスケジュール的に他の仕事は絶対に受けられない状況でした。それでも、シブサワさんに提示していただいた企画は魅力的で、ぜひ実現させたいから、今の状況で自分ができる範囲のことをやらせていただこうと。そこで『FGO』のライターチームに相談したんです。特に東出祐一郎さんと桜井光さんには『Fate/SR』のシナリオ監修として、『FGO』の制作と同時進行になるけど、自分たちのシナリオやキャラクターを担当するくらいの熱量をかたむけて臨んでほしいとお願いしました。二人からは心強い返事が返ってきたので、私もいよいよ腹をくくって『Fate/SR』のシナリオ・設定面の制作に参加することにしたんです。
――具体的にはどういった作業をされましたか?
奈須
物語全体のプロットやキャラクターの設定を、私を含む『FGO』ライター陣が固め、それをもとにコーエーテクモゲームスさんのライター陣がシナリオを執筆。それを東出&桜井両氏が監修して……という形でキャッチボールを繰り返す。最後は私が総合的な仕上がりをチェックさせてもらう、という形です。『FGO』の制作に持てるエネルギーの大部分を割いているので、あまり細かいところまで手を入れることはできないけど、それでも、どうしてもここだけは、という部分だけ意見を出すというスタンスで、総括的な監修をさせていただいています。
シブサワ
『Fate』のゲームを作らせていただく以上、こちらも優秀なスタッフを配置する必要があると考えていました。その点、弊社には「Metacritic」で高評価を得た『ファイアーエムブレム風花雪月』のシナリオライター陣がいるので、ぜひ彼らに『サムライレムナント』のシナリオをお願いしたい、とプロデューサーに伝えました。
――コーエーテクモゲームスのライター陣のシナリオを読んだご感想は?
奈須
いや、本当に素晴らしくて驚きました。『ファイアーエムブレム 風花雪月』などを手掛けたコーエーテクモゲームスさんのライター陣の実力の高さは、私も以前から認識していました。実際に『Fate/SR』の制作でやりとりをしていても、こちらが狙ったとおりのものを返してくださるんです。あらためて、そのレベルの高さを再認識しました。
――『Fate』や『FGO』のシナリオを外部の方が書くのは、とても敷居が高くて難しいと思うのですが……。
奈須
TYPE-MOON作品における基本設定や既存作品の知識、細かい裏設定など、覚えるべきことや履修必須の作品が山ほどあるので、かなり大変だと思います。実際、TYPE-MOONが抱えている悩みのひとつが、新人ライターをなかなか雇えないことなんです。だから制作ではそこが最大のネックになると思っていたんですが、その心配は杞憂に終わりました。非常にクオリティの高いシナリオを書いていただいてとても助かりました。
シブサワ
奈須さんにそう言っていただいて、ホッとしました。本作のシナリオがいいものに仕上がっているのは、奈須さんだけでなく、東出さんや桜井さんのご協力があってこそです。特に東出さんと桜井さんとは毎日かなりの数のテキストをやりとりさせてもらっていると聞いています。みなさんのお力添えのおかげで『Fate/SR』のシナリオは「Fate」や『FGO』ファンの方にも自信をもってお届けできるものになっていると思います。実際、大の『FGO』ファンである私から見ても、本作のシナリオは素晴らしい。『FGO』の醍醐味は、非常に奥深く、予想がつかないストーリー展開です。「予定調和」ではなく「予定不調和」だからこそ面白い。そんな『FGO』ならではの物語の魅力が、『Fate/SR』でも味わえるはずですよ。
サーヴァントの強さを直に体感できるバトル
「TYPE-MOONエースVOL.15」特別企画 「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」
――『Fate/SR』のシナリオは、奈須さんも太鼓判を押す出来だということがわかりました。では、本作のゲーム部分の印象はいかがですか?
奈須
『Fate/SR』の企画を伺ったとき、最初は「無双」シリーズの派生形――いわば『Fate無双』のような作品をイメージしていました。おそらく、リリースやPVをご覧になったみなさんもそう思われたでしょう。でも、実際に開発段階のものをプレイさせていただいたんですが、多くの軍勢をなぎ倒す爽快感がウリの「無双」作品とは明らかに別物でした。
――具体的には、どんなところに『Fate/SR』ならではの面白さを感じたのでしょう?
奈須
やってみて感じたのは、今までの『Fate』派生作品の中で、マスターとサーヴァントの力関係を一番わかりやすく、的確にあらわしていることです。これは本当に驚かされました。主人公の宮本伊織は肉体的にはごく普通の人間ですが、「宮本武蔵の一番弟子」ということで、剣の腕はかなりのもの。そんな伊織を操って、町人を困らせるならず者や、突然襲ってくる忍者軍団と戦うんですが、彼はそこらの人間相手には負けないんです。ゲーム序盤では、多対一の状況でも苦労せず勝てる。あの武蔵の弟子なんだから、それくらい強くて当然です。でも、サーヴァントが相手となると話は別。忍者軍団相手に無双していた伊織が、そのあと出現したライダーに圧倒されてしまうんです。もう「格」が違うというくらいメチャクチャ強くて、下手するとワンパンで倒されてしまう。「腕の立つ人間」と「英霊として座に登録されたサーヴァント」の戦力差を、アクションゲームとして味わえたのはとても新鮮な体験でした。一度プレイすれば、「ここまで明確に差があるのか!」と思われるでしょうね。
シブサワ
バトルパートは結構メリハリが効いていますよね。普通の人間相手の戦闘はわりと楽だけど、中にはかなりがんばらないと勝てない敵もいる。特にサーヴァント相手の戦闘は難しめに設定されていますが、これが圧倒的に面白い。私から見てもよく作り込んでいると思いますが、まだまだブラッシュアップしていきますよ。
――プレイしている様子を拝見しましたが、サーヴァント戦は「死にゲー」のボス戦を思い起こすキツさに見えました。
シブサワ
制作チームには、多くの方に遊んでいただけるバランスにしてほしいとは伝えていますが、それでもサーヴァント戦は結構ゲームオーバーになるくらいの厳しさですね。といっても、多くの「死にゲー」の難しさと異なって、繰り返し挑んだりキャラクターを成長、強化させたりすれば、突破口が見えてくるような設計にしています。奈須さんが先ほどおっしゃった、手強いサーヴァントとの死闘を存分に味わっていただけると思います。
奈須
サーヴァント戦をご覧になれば、人間がサーヴァントに挑むことの絶望感がはっきりわかると思います。でも、武蔵の弟子として研鑽を積んだ伊織が主人公なので、決死行の覚悟になればサーヴァントが相手でもかろうじて勝機が見える。そのバランスの見極めが『Fate/SR』の制作上のテーマのひとつでしたが、うまい落としどころを見つけたなと感じました。
――以前からTYPE-MOONファンの間では、「かなり強い部類の人間とサーヴァントが戦ったら、どちらが勝つのか」という議論が交わされてきました。そのアンサーが『Fate/SR』で出るのでは、と期待してしまいます。
奈須
そうですね……。そのときの状況や、サーヴァントの知名度補正など、さまざまな条件を加味しなければならないので、「強者ならサーヴァントに勝てる」とは一概には言えません。そして『Fate/SR』はあくまでもアクションゲームです。たとえサーヴァント相手に勝てたとしても、「伊織くんもたしかに強いけど、プレイヤーの腕があったからこそだよ!」とお考えいただければと。「人とサーヴァントどちらが強いか」ではなく、「人がサーヴァント相手に戦ったら、どれだけキツいか」を感じていただくのが正しいかもしれません。
華やかでクセの強い登場キャラクターたち
「TYPE-MOONエースVOL.15」特別企画 「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」
――本誌では、『Fate/SR』の主な登場キャラクターたちを一挙に紹介しています。特におふたりが注目しているキャラクターについて教えてください。
シブサワ
それはもう、なんといっても武蔵ですね! 新衣装のデザインがまた秀逸です。かわいくて、凛々しくて、かっこよくて。武蔵ファンの私も大満足です。
奈須
『FGO』の武蔵の衣装は、華があってキャッチーな色使いが特徴でしたが、本作の武蔵は華やかでありつつもシックで、凄みと重みを感じます。これもまた素晴らしい。自分としては、まずは伊織とセイバーの主人公コンビを推したいです。「Fate」では士郎とセイバーが恋愛関係になる「ボーイミーツガール」な展開を描きました。一方、『Fate/SR』は伊織とセイバーの「バディ感」を主軸に描いています。これまでのシリーズでは、非業の最期を遂げたサーヴァントが闇を背負っており、それが光の側のマスターとの出会いによって救われていく、というものが多かった。しかし、本作ではこれまでと異なる関係性になるので、その新鮮さも楽しんでいただきたいですね。
シブサワ
伊織とセイバーはとてもいいバディですね。お互いにボケとツッコミをし合っていて、場合によってその関係性が逆転する。見ていて飽きない、面白いコンビです。あとは地右衛門が気に入っています。彼は筆舌に尽くしがたい怨念を抱えた人物で、本作では一番悪党っぽく描かれているんですが、あのアクの強さがたまらなく魅力的に感じます。
奈須
目的のためなら手段を選ばない地右衛門は、たとえ自分が危険に陥っても周囲に被害を出さないように戦う伊織とは、好対照を成すキャラクターと言えます。ほかに注目キャラを挙げるならアサシンかな。異相・異形で得体のしれない素晴らしいデザインです。アサシンというクラスとデザインに込められた細かな記号をヒントにすれば、「真名当て」が得意な方なら推測できてしまうかもしれません。
シブサワ
一癖も二癖もあるキャラクターばかりのなかで、鄭成功はホッとさせてくれる好漢と言えますね。
奈須
鄭成功は史実の人物なので、そこから大きく外れないように描いています。まっすぐで清々しい男で、パートナーであるアーチャーとの関係も良好。そんな人物が、「盈月の儀」において伊織たちとどんな関係性を結ぶのか、ご注目ください。
「TYPE-MOONエースVOL.15」特別企画 「奈須きのこ×シブサワ・コウ スペシャル対談」

撮影/後藤利江

気になる対談の続きは、雑誌「TYPE-MOONエースVOL.15」にてぜひご覧ください!