王位継承問題に端を発したイングランド王国とフランス王国の争いは、長きに及んでいた。
互いに強力な2国の力は拮抗し、容易な決着を許さなかったのである。
両国の騎士や兵士にも疲労は色濃く、結果、戦場の主役は傭兵へと移り変わろうとしていた。
金次第で敵味方を入れ替える傭兵は、いまだ蔑視の対象となりつつも何物にもとらわれない自由を持ち、 実力さえあれば富も名誉も手にすることができた。
何かを成さんとする者にとって、戦争は渾沌と荒廃のみならず無限の可能性をもたらしたのである。

そして、今また一人の傭兵が戦場に足を踏み入れた。
その目の先にあるのは富か名誉か、あるいは……。
イングランド王国の王太子。
戦場では常に漆黒の鎧を身にまとうことから、「黒太子」の名で呼ばれる。
優れた才気と気高い理想を持つイングランド王国の未来の希望。
正義感が強く心優しい少女。
戦乱に荒れ果てるフランスを憂いて、戦いに身を投じる。
さまざまに悩みながらも、故国を戦乱から解き放つため懸命に戦い続ける。