「天の川を渡る舟」
――――バース歴7月3日。
第XX期 日の曜日、夕刻、王立研究院。
- サイラス
- ほう…短冊という色紙に願い事を書いて笹につるすと、お星さまが叶えてくれると。
…驚きですね。無垢なるかな、バースの民。
- タイラー
- 本気で叶えてくれると思っているのは子供だけですよ。大人は、遊びで参加するだけです。
会社によっては、ビルのエントランスに大きな笹を飾って、社員が自由に願いを書けたりするんです。
- サイラス
- なるほど、なるほど。
タイラーも会社員時代、参加していたのですか?
- タイラー
- いえ、俺はそういうのは、ちょっと。
でも、同僚の…特に女性は、結構書いてましたね。
- サイラス
- ほう。では、女王候補のお二人も、参加されていた可能性があると。
- タイラー
- 飛空都市でもやってみるつもりですか?
- サイラス
- そのとおりです。新しい場所での仕事は、ストレスがかかるもの。
カナタ様やタイラーにとっても良いことだと思いますし、さっそく、大きな笹を仕入れて参りましょう。
では、失礼いたします。
- タイラー
- 七夕…かあ。俺、昔、なに書いたっけ…。
――――バース歴7月7日。
第XX期 水の曜日、夜、女王候補寮玄関。
- サイラス
- …というわけで、大きな笹を購入し、聖殿の中庭に設置いたしました。
- あなた
- (さっき大きな通販の荷物が届いていたのは、笹だったのか…)
- サイラス
- そのとおりです。短冊も大量に準備しました。
飛空都市の職員や家族も自由に願い事を書けるようにしています。
ちょっとしたお飲み物と食べ物もございますので、今夜はそちらでお夕飯を済ませるとよいですよ。
私もあとで、司会をしに参ります。
では、失礼いたします。
- レイナ
- …七夕なんて、素敵ね。
私が勤めていた会社のエントランスにも毎年大きな笹が飾られていたけど、
ひとりで願い事を書くのが気恥ずかしくて、参加したことはなかったわ。
今年はあなたと一緒だし、思い切って書いてみようかしら。
- あなた
- いいと思うよ。行こう、レイナ。
――――第XX期 水の曜日、夜、聖殿中庭。
- レイナ
-
わあ…素晴らしいわ。
中央の笹を取り囲むように、キラキラ宙で光っているのは何かしら……星?
まるで、私たちのすぐ上に、天の川があるみたいね。
なんてロマンティック…!
- あなた
- (笹に短冊が吊られてないのは、最後に飾るのかな…)
- タイラー
- お疲れさまです。
- レイナ
-
あら、タイラー。お疲れさま。
…手に持っているのは、ビール?
- タイラー
-
あちらで、お二人が育てている大陸の地ビールを配ってるんです。
業務時間外なんで、お許しください。
- レイナ
-
もちろんよ。私ももらってくるわ。
あなたの分も取ってくるから、そこに座って待ってて。
- あなた
- ありがとう、レイナ。
- タイラー
-
………………。
あ、ごめん。座れば? テーブルと椅子、たくさんあるし。
- あなた
-
そうだね。タイラーも一緒にどうぞ。
ところで、宙に浮かんでる星なんだけど、これってどういう仕組みなの?
- タイラー
-
詳しくは知らない。ゼノ様が作ってくださったんだ。
箱の蓋を開いたら星がたくさん飛び出してきて、天の川になった。
すごいよな。ここでは、あらゆることが自由だ。
俺ももっと勉強して、ロレンツォ様やゼノ様みたいに世界を豊かにしてみたい。
- あなた
-
なるほど。それを短冊に書いてみたら?
- タイラー
-
書かないよ。それは、自分で叶えることだ。
…じゃあ、また。お先。
- あなた
-
………………。
- ミラン
-
あれ~、どうしたの? ひとり?
ヒコボシ様の登場だよ~。
- フェリクス
-
誰が彦星だ。図々しく隣に座るな。
- レイナ
-
ただいま。…って、ミラン様、フェリクス様。こんばんは。
- フェリクス
-
こんばんは。…2人で、4杯も飲むのか?
- レイナ
-
それぞれの大陸で、別の地ビールを作っていて…
どちらも試したいので、持ってきたんです。
はい、どうぞ。
- あなた
-
ありがとう! ごめんね、たくさん持たせちゃって。
- レイナ
-
いいのよ! 私、筋力は結構あるの。
- ミラン
-
レイナも座って、座って。フェリクスも!
- フェリクス
-
はいはい。
- ミラン
-
恋人たちを分かつ川だなんて、面白い話だよね~。
君たちは、年に一回しか会えない恋人と、毎日会える同僚と、どっちのほうがいい?
あ、恋人とは、一切連絡取れないって前提ね。
- レイナ
-
ううん…悩みますね。恋人かしら。
- フェリクス
-
毎日会わないと、すべてが噛み合わなくならないか?
僕は、同僚。
- ミラン
-
そっか。君は?
- あなた
-
私は―――――
- ユエ
-
よお、来たのか、お前たち。
- レイナ
-
ええと……よく見えないわ。
ユエ様と、ヴァージル様ですか?
- ユエ
-
天の川から降りてきた光の王子様だと思ったか?
まぶしすぎたなら、悪かったな。
- ヴァージル
-
単に逆光だったんだと思いますよ。
こんばんは、女王候補たち。食事はお済みですか?
- あなた
-
いえ。まずはビールを飲んでます。
- ヴァージル
-
なかなかですね。
でも、なにか少しお腹に入れたほうがいいですよ。
つまみになりそうなものを取ってきます。
- カナタ
-
あれ、お姉さんとレイナじゃん。
- ゼノ
-
なにか食べるなら、いりますか?
俺たち、すごいいろいろもらって来ちゃって。
- ミラン
-
ホットドッグ、トルティーヤ、チョリソー、ピザ、シュラスコ、ポテトフライにフライドチキン。すご~い。
- ゼノ
-
まだ口つけてないから、欲しい物があったら取ってください!
机の上に置いちゃいますね。
- ユエ
-
お前ら、腹壊さないのか? ちゃんと限度考えて食えよ。
- カナタ
-
歩いてるだけで、飛空都市の皆が、これも食べて、あれもこれもって、どんどん皿に乗せてくんですよ。
- ヴァージル
-
子供のように見えてるんですかね。
- ユエ
-
カナタのことは皆、心配してっからな。
- カナタ
-
え。そういうことだったんだ。
- ミラン
-
女王候補たちは、何食べる?
- レイナ
-
ありがとうございます。じゃあ、私は…。
- フェリクス
-
皿とフォークがないと無理だな。もらってくる。
- ユエ
-
じゃあ、俺様も行ってやるよ。皆、待ってろ!
- ヴァージル
-
…やれやれ、騒がしいですね。
よければ、俺と2人で笹を見に行きませんか?
- あなた
-
(目が合った…答えにくいな…)
- ノア
-
あ、女王候補たち……いた。
…短冊持ってきたから、書くならどうぞ。
- レイナ
-
ノア様。ありがとうございます。
- あなた
-
皆はもう、願い事を書いたの?
- シュリ
-
ユエが書け、書けとうるさかったからな。
守護聖は全員、書いた。
- ロレンツォ
-
願い事を笹に吊るすだなんて、可愛らしいイベントだね。
お嬢さんたちは、何を書くつもりだい?
- レイナ
-
そうですね…私は、「納得の行く結果を得られますように」にします。
- シュリ
-
なるほど。お前は?
- あなた
-
私は………。そうですね。決めました。
- ノア
-
じゃあ、ペン。どうぞ。
- あなた
-
ありがとう、ノア。
- ユエ
-
ただいま。皿とフォークだぜ。ほら。
- フェリクス
-
サラダもいくつか取ってきた。
肉と炭水化物ばっかじゃバランス悪いだろ。
- レイナ
-
ありがとうございます!
- あなた
-
これ、書いたらどうしたらいいんだろう?
- カナタ
-
短冊は、サイラスが合図するまで自分で持ってろって。
理由はわかんないけど。
- ゼノ
-
俺、知ってるよ。多分カナタ、驚くと思う!
- カナタ
-
そーなの?
- サイラス
-
ラ・ラ・ラ。クルックルッ。ただいま、マイクのテスト中。
- ロレンツォ
-
…始まったね。
- サイラス
-
ラー。コホン。
飛空都市に住まう、すべての皆様。七夕の宴にようこそ。
皆様、そろそろ短冊の準備はできましたでしょうか?
………よさそうですね。
それでは、始めましょう。
鋼の守護聖ゼノ様と、地の守護聖ロレンツォ様のご協力を得て作り上げた、七夕ショー in 飛空都市。
皆様の短冊が、いま、天の川を泳いで笹に向かいます!!
- ミラン
-
わあ! 皆の短冊が勝手に動き出した!
- カナタ
-
すげー!! 宙に浮かんで…天の川を流れる舟みたい!
- サイラス
-
短冊は、天の川を渡り、笹の葉に自ら結ばれて行きます。
飛空都市のすべての人たちの願いが、叶いますように。
これにて、七夕ショーを終了いたします。
この場所はまだまだ開放しておきますので、ご自由にお楽しみください。
ありがとうございました。
- レイナ
-
……感動してしまったわ。素晴らしいわね。
- あなた
-
うん。本当だね。
(こんな素敵な七夕を見られるなんて。きっとこの先ずっと、忘れないだろうな)
- ユエ
-
なに寂しそうな顔してんだよ。宴はこれからだろ!
俺たちも酒取ってくるぜ。カナタとゼノは、ジュースだ。
そろったら、乾杯しよう!
- ミラン
-
は~い!!
――――第XX期 水の曜日、夜、聖殿中庭。
七夕の宴は深夜まで、続いたのでした。
★それぞれの短冊に書いた願いごと★