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侍:「姐さん...」
私:「何?」
侍:「いえね、確かにこれも陰陽師の秘められた力なんでしょうけど...」
私:「文句言わないの! はい、この麻持って! あと綿花も!」
私は侍を連れて採集をしていた。これだって陰陽師の能力の一つなんだから、間違っちゃいない。あまり大量に物を持てない私にとって、荷物運びがいれば大助かりだ。
侍:「ところで姐さん、お忙しいところ済まないんですが」
私:「今度は何? 持ち逃げしたらただじゃおかないわよ」
侍:「いえ、そうじゃなくてあれを」
採集に夢中で気づかなかったのだが、いつのまにか私達は妖怪に囲まれていたのだ。
私:「なるほど、ちょっと厄介ね。わかったわ。私がこいつらの一つと戦ってる隙にあんたは町に戻ってなさい。門前で落ち合いましょう」
侍:「何言ってるんですか、姐さん。犬の次に不義理が嫌いって言いましたでしょ。戦闘も手伝いますって」
私:「でも、あんたまともな武器持ってきてないでしょ」
侍:「姐さんの全体妖術で片づけりゃいいんだから、要らないんでは?」
私:「万が一ってこともあるでしょ。手伝うんだったらこれ使いなさい」
そう言って私は「棍棒召喚」を行い、侍に渡した。
私:「イイ? いくわよ。 戦闘に突入したら即護衛して」
侍:「がってん!」 |
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気合いが満タンになると同時に、私は妖怪に襲いかかった。
「呪縛」を仕掛けた後、侍が護衛に入るのを見極めて「召雷」を放つ。
私:「!」
驚いたことにほとんどダメージを与えられない。吹雪をかけてみたが、これも同じだった。
侍:「姐さん、これは...」
私:「どうやら属性抵抗が相当高いようね。全体妖術じゃらちが明きそうにないわ。あんた、守護は実装してる?」
侍:「もちろんですよ」
私:よし。私の合図と共に護衛を解除して一旦防御態勢を取りなさい。戦闘を全体妖術主体から打撃主体に切り替えるわ」
「結界」を張った後、「奪気合」を仕掛け、全体妖術で減ってしまった気合いを回復する。戦術切り替えの準備は整った。
私:「防御態勢を解いて!」
侍が攻撃を仕掛けられるようになる前に「低速呪霧」をかけて妖怪の素早さを下げる。侍の防御態勢解除が完了する。
私:「下から順に攻撃を掛けて!」
侍:「がってん!」
侍の攻撃に合わせて「金縛り」を仕掛ける。相手が行動不能になったところに侍が棍棒で殴りかかる。敵が準備動作を伴う攻撃をしようとするたびに金縛りを仕掛ける。この繰り返しで一体、また一体と敵の数を減らしていく。
もう大丈夫だろう。余力もある。この時また悪知恵が浮かんだ。心の中でニヤリと笑いながら、私は召喚の準備動作に入った。
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侍:「うわー! なんじゃそりゃあ!」
私の体がみるみる獣に変わっていく。「犬神変身」を唱えたのだ。私が犬になっていくのを見て、侍は悲鳴を上げて逃亡してしまった。反撃や「神撃」で敵にダメージを与え、最後の一匹を「神罰」で撃破した。
戦闘が終わり辺りを見回したが侍の姿は見あたらない。相当遠くへ逃げていったようだ。
私:「きゃはははははは! 犬が嫌いとは言ってたけど、これほどとはねえ! きゃははははは」
しばらく笑い続けていたが、笑い疲れて落ち着くと、あることに気がついた。
私:「あ、麻と綿花持ち逃げされた...」
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- 陰陽師は「材料採集」を行える。
- 衣類生産のための布地を作るのに必要な「麻」や「綿花」、「蚕まゆ殻」などを入手可能であり、鍛冶屋が大量に消費する「炭」や「磨き砂」を始めとした副産物も採れるので、材料の商売も可能である。
- 「奪気合」も「低速呪霧」もどちらも「仙道」の目録の技能。仙道にはこの他に体力と気合い両方奪う「奪生気」、敵全体の知力・魅力を下げる「暗黒呪霧」、走る速度を上昇させる「神足の術」がある。
- 仙道の目録をもらうためには4つの方術の壱いずれか一つの皆伝が必要。
- 「召喚」は「召喚術」の目録の技能。アイテム類を発生させるのが大半だが、犬神に返信する「犬神変身」や憑依攻撃することで相手を呪い状態にする「式神召喚」といった技能もある。
- 「召喚術」で召喚したアイテム類はログアウトすると消滅してしまう。
- 召喚術の目録は仙道の壱を皆伝していなければ手に入れられない。
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