積極的に自分を売り込んで徒党に加えてもらい、修行に励む日々が続いた。おかげで乏しかった戦闘技能と基礎能力はそれなりに身に付いていったが、どうしても身に付かないものが一つあった。 「自分はどういう侍になればいいのだろう?」
ある日、国境のあたりで、どこからか救援要請がきた。 「いた!」国境を越える抜け道の入り口付近で、何者かに襲われている。すぐさま全員で戦闘に加わろうとして驚いた。襲っていたのは、浪人になっていた文吾だったのだ。道場で合ったときよりもさらに成長し、我々よりも数段高いレベルになっていた。 人数で押し切るべく、我々は戦闘に突入した。 しかし、相手は一人とは言え高いレベルの文吾。陰陽師の金縛りも決まらず、術連携も大きなダメージは与えていない。
そうこうしているうちに術連携起点の神職は気合い不足に陥る。救援要請を出した人を護衛していた味方の侍が倒される。このままではまずい! この戦いで私はたまたま売り物にする予定だった弓を装備していた。荷物を見ると「ほう烙火矢」が何本かある。
 :「ほう烙火矢打ちます!」
その声に陰陽師が残り少ない気合いを振り絞って金縛りをかける。すぐさま私は弓を引き絞った。なかなか決まらなかった金縛りが見事に成功。そこにほう烙火矢が突き刺さった。膝を突いて崩れ落ちる文吾。「勝った...」私はしばらく呆気に取られて立ちつくしていた。
文吾:「お前に倒されるとはな」
幽霊状態の文吾が話しかけてきた。
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イメージ  :「...チームワークの勝利ですよ...私の力じゃないです」
文吾:「ああ、効いたよ、金縛りとほう烙火矢のコンビネーションは。身を賭して他人をかばった侍もいたし...」
二人はしばらく押し黙った。やがて文吾が口を開いた。
文吾:「お前、弓侍の道へ進んだらどうだ?」
 :「え?」
文吾:「弓も矢も自分で作れるんだろう?」
迂闊だった。生産で身近に接してきていたというのに、言われるまで考えてもみなかったのだ。
文吾:「『援護射撃』や『乱れ撃ち』なんて技能もあるし、守護や護衛関係なく攻撃できるじゃないか。そうすれば...」
少しためらって文吾は続けた。
文吾:「徒党の戦術として貢献できるだろう?」
 :「文吾さん...」
文吾:「実感したよ。徒党を組むことの大事さをな。悔しいが...頼定の考え方は正しかったってこった」
自嘲気味に文吾は笑った。
文吾:「だがな、考え方を認めただけだ。まだ負けた訳じゃない。いつか頼定を倒してやる!」
変わらない文吾の覇気に私も笑った。しかし、文吾の顔からは笑みが消えていた。
文吾:「お前も近いうちに頼定と戦うことになるんだ、一緒にやらないか?」
 :「? どういうことですか?」 文吾:「なんだ、知らないのか? 頼定のヤツ出奔したぞ、敵国へ」

その言葉に、私の顔からも笑みが消えた
頼定出奔の件はちょっとした話題になっていた。彼を慕う数人も行動をともにしたそうで、それはつまり合戦の主力部隊が当家から抜け、その分がそっくり敵国に上乗せされたということだ。「なぜ?」私には頼定の出奔の理由が判らなかった。「なんとなくだが、想像はつく」文吾はそう言っていたが、それ以上は語らなかった。
ある日、頼定と徒党を組んだことがある人から事の真相を聞く機会を得た。 「より強くなるために」 より強くなるため? 徒党を共にしていた文吾がそれを聞いて皮肉な笑みを浮かべている。
文吾:「やはりな。とんだ喜劇だ。まるで昔のオレじゃないか」
 :「...徒党、と言っても、あの人にとっては結局自分のための手段でしかなかった、ということなんでしょうか...」
あこがれとして燦然と輝いていた頼定の姿が、私の中で崩れていった気がした。以前の私であれば途方に暮れていたことであろう。だが今は違う。私の中には目標とすべき理想の侍像がすでにできあがっていた。
 :「文吾さん、挑みましょう、頼定さんに。自分たちがとった侍の道の誇りにかけて」
文吾は不敵な笑みを浮かべてうなずいた。 それからの我々は忙しかった。ある日は修行のための狩り。またある日は模擬戦を道場で。強力な装備をそろえ、身分を上げるために勲功を貯め、と、山のようにあるやるべきことをこなしていった。

そして、時は来た。再び敵国と合戦が行われることとなったのだ。
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解説
  • 道場では「剣術指南書」「弓術指南書」といった武器の種類に対応した系統の目録を手に入れることができる。
  • 各武器の目録には各武器に応じた技能が存在する。
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