【 エッセイ部門 佳作 】 GRETSCH-56513 様

父と兄と自分の「信長の野望」


私がまだ小学生だった、今から25年程前、我が家には父が使う「FM-77」というパソコン(その頃はマイコン?)がありました。ゲームをするのに、LOAD “ほにゃらら…” と打って、カセットテープを再生して1時間程経過すると遊ぶことが出来るゲームを兄と2人で遊ぶことが、土日の最高の楽しみでした。

そんなある日、もともと歴史好きな父が「面白そうなゲームを買ってきた!」と言って、僕と兄に見せてくれたのが『信長の野望・全国版』でした。最初は父がそのゲームにハマってしまって、なかなか僕と兄にゲームをさせてくれなかった。僕と兄は、父がする『信長の野望・全国版』の画面を父の背中越しに見ていました。2~3週間程経ってから「やってみたらいいよ」と僕と兄にすすめてくれました。父の影響から、僕も兄も歴史が好きだったので、最初に選んだ大名は、兄は織田信長で、私は徳川家康でした。

スペースキーを使った能力値選択も、何となく 「全部100以上を目指す!」と、それだけで兄弟2人でキャッキャと騒ぎながら、時間が過ぎていきました。

一番最初に何をしたらいいか分からない兄と僕は、「年貢を上げるんじゃ」とアドバイスする父の意見のもと、年貢を50%に設定しました。その後、「開墾すると治水が下がるんじゃな~」「民忠が低いと一揆が起こるんじゃが」「委任するときはバランス国がいいかな~」等、内政をして兵士を増やして敵国に攻め入るという一連の流れを楽しむことが出来るようになりました。

日曜日には兄と私の友達が遊びに来て、6人でマルチプレーを楽しんだりしました。自分の番がくるまでは、パソコンの傍で漫画を読んで、順番がきたらパソコン前で命令を出す。今考えればすごく無駄な時間が多いように感じますが、当時は非常に盛り上がり、我が家ではこのプレースタイルがとても流行りました。

 

ゲームを長い間しているうちに、「敵の兵力がスゴく多い時があるな」と気づくようになり、大名には、それぞれコンピュータが担当した場合、一定の確率で織田信長なら通常兵士85⇒249とか、北条氏政なら通常兵士75⇒225などとパワーアップすることを発見しました。そしていつしか、弱小大名を担当して強国を倒すという「下克上」を、兄弟2人でも楽しむようになりました。宇喜多、最上、斎藤、波多野、木曾、宇都宮、阿蘇…(姉小路は、わりと強い(笑))など、場合によってはすぐに死ぬ大名で楽しむのが、僕ら兄弟2人の信長スタイルとなりました。その中で、自分達の戦い方に名前を付け、敵の1部隊だけを狙って攻撃する「大将狙い戦法」や、敵1部隊だけを残し、後は地形を使って30日逃げ続ける「周り回り戦法」などと呼びました。ネーミングは置いておいて、僕にとって「ゲームってこんなに楽しいんだ~」と感じさせてくれる素晴らしいゲームだと未だに心に残っています。

父は『全国版』で「信長の野望」を卒業し、兄は『武将風雲録』で「信長の野望」を卒業しました。私は少年の頃の心を持ち続けて、今回の最新作まで全ての「信長の野望」を、有り難い事に楽しんでこれました。『信長の野望・全国版』との出会いによって歴史を好きになり、歴史本や歴史小説を読むようになり、地理や外国の歴史にも興味を持つようになりました。

 

父と兄と僕の3人が会った際、昔の話になると、一緒に遊んだ「信長の野望」の話が出てきます。

「波多野謀反で、すぐ死んでたな~」「後継で水谷っていうのが出てきて強かったけど直轄地で暗殺したら死んだな~」などと笑いが共有でき、未だに3人仲良しです。

これからも、多くの作品が作られると思います。歴史シミュレーションの王道「信長の野望」をいつまでも作り続けて下さい。「信長の野望」は、僕にとって、いつまでも色褪せることのない最高の作品だから。

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