オスマン帝国の大艦隊、イスタンブールに集結。
地中海に再侵攻の兆しあり――。
この報せを受け取ったヴェネツィア元首は、天を仰ぎこう嘆じたという。
――ロードス島沖の大勝も、オスマン帝国にとっては、ヒゲの先を焼かれたに過ぎなかった、ということか。
対策を一任された元首補佐官アルヴィーゼ・オルセオロは、聖ヨハネ騎士団と共同戦線を張ると共に、教皇庁に周旋。たちまち、西欧諸国連合艦隊の結成が決定し、総司令官にはイスパニアの王弟、アウストリア伯ドン・ファンが選ばれた。
ドン・ファンは、西欧諸国の航海者たちに向け、檄を飛ばした。
――諸国民よ! 今こそ神の御名の下、各々が天授の責務を全うすべし!
こたびの聖戦にて功を立てし者には、最高の栄誉の証が与えられん!
かくして、世界中に散っていた名立たる航海者たちは、己が祖国を守るため、そして自らの武名を轟かすため、続々とレパントへと集結するのだった。
一方、オスマン帝国側にも秘中の策があった。
スルタン(皇帝)は、地中海最凶を誇るバルバリア海賊に参陣を要請。
遂に、総帥ハイレディン・バルバロッサの招聘に成功していたのである。
あまたの将星、レパントに集う――。
地中海の覇権を賭した最後の聖戦が、今ここに幕を開けようとしていた。 |