祖父の勧めで、仙台の街を訪れたかなで。
素敵な街だが、仙台に越してくることが自分の音楽にとって、どれほどの意味があるのだろうか。
やっぱり帰ろうか……。かなでがそう思った、その時――
トロンボーンの音色が晴れやかに響き渡る。
音に導かれるように、かなでは思わず走り出す。
たどり着いた先にいたのは、楽しそうにトロンボーンを演奏する新。
かなでは思わず新の演奏に聞き入る。
 新「うーん! 今日も快調快調、絶好調! オレって天才~!」
  「ねぇねぇ、君の持ってるそれも楽器ケースでしょ?」
  「これも何かの縁だしさ、今の曲、合奏しようよ」
新の提案で、ふたりで演奏してみることに。
道行く人々がかなでと新の楽しそうな演奏に思わず足を止め、ふたりに拍手を送る。
 新「あー、面白かった。楽しかったね!」
  「ここで演奏してると、空に音が広がってく感じがするでしょ? それが、オレ大好きなんだ」
もう一曲――と思った瞬間、新の携帯に着信が。
どうやら、新は部活に大遅刻してしまったらしい。
 新「オレ、水嶋新、そこの至誠館高校の吹奏楽部1年!」
  「また、一緒に演奏しよ。絶対、約束だよ。またね! Tchau!」