響也と観覧車に乗ることになったかなで。
静かなふたりきりの空間の中、幼い頃にかなでと響也、律の3人で観覧車に乗った話をする響也。

響也「——小さい頃、律と3人で観覧車に乗ったこと、覚えてるか?」
  「あん時も、高いとこで観覧車が揺れてさ。お前、すげぇ怖がって。降りたい! って言い出して」
  「そしたら、律がお前の手を取ったんだ。律に大丈夫だって言われたら、
  すぐに安心した顔になって……笑ってた」
  「そのせいかな、観覧車、あんまり好きじゃなかった」
  「悔しくてさ。オレじゃ、かないっこないって思ったし、それが当然のような気もしてた」
  「どうせ手が届かないなら、必死にならないほうがいい。
  いや、必死になるのがみっともないような気がしてたんだ」
  「何かを欲しいって、心から願ったとしても、自分から動くなんてカッコ悪いって」
  「……でも、何もしなくても、自然に手に入るものなんてないよな。今の関係を壊して、
  変わっていくのは怖い」
  「でも、それでもオレは……」
響也のキスにドキドキするかなでをじっと見つめ……。
  「お前のそういう顔、他の誰にも見せたくない……」
  「お前のこと、誰にも渡したくない。他の、誰にも——」