天宮の様子がおかしいことが気になっていたかなでは天宮に電話をかける。 天宮の暗い自室では携帯電話の着信ランプが光り、かなでからの着信であることが表示されている。 そのことを知っても電話に出ようとしない天宮。 天宮「………………………」 静かな自室に鳴り響く着信音。天宮は携帯を握り締め呟く。 「小日向さん……。僕を捨てた理事長が、僕のピアノを美しいと言ったよ」 「信じられないだろう? 誉めてくれたんだ、僕を不要だと言ったあの人が」 「僕の音楽を認めてくれて、僕に……函館天音に戻ってくるように言ったんだよ」 「函館に行けば、僕は君の敵になる。アンサンブルを捨てた裏切り者になる」 「君に話せるなら、全部、包み隠さず言えるなら、今すぐこの電話に出るのに……」 「君の声が聞きたい。何もかも話してしまいたい。それなのに……怖いんだ」 「誰に憎まれてもいい。でも、君にだけは…嫌われるのが怖い……。君にだけは、嫌われたくない……!」 「僕は恋を手に入れた。音楽を手に入れた」 「それがこんなに苦しいこととは知らなかった」