学校の地下にプールがあると聞き、泳ぎたい気分だったかなでは、プールへ足を運ぶことに。
生徒数が少ないせいか、がらんとして余計に広く感じるプールに、水を切る音だけが響き渡っている。
その音の方に視線を向けるかなで。「あれは——」
休憩を取ろうとプールから上半身を出し、プールサイドにもたれる冥加。
水に濡れた前髪は垂れ、疲れを感じさせない涼やかな表情だ。
冥加「……小日向?」
  「ここで鉢合わせるとは思わなかったな……」
前髪が下りていることが新鮮で、思わず見入ってしまうかなで。
冥加「このほうが好みか?」
かなでの心臓がドクンと音を立てたのが聞こえたのか、冥加はフッとからかうような笑みを浮かべる。
冥加「……フ、赤面するくらいならぶしつけにながめるのをやめたほうがいいな」
  「穴が開くほど見られては、軽口のひとつも叩きたくなる」