■ 原作者プロフィール

福井　晴敏
Harutoshi Fukui
1968年 東京都生まれ。
私立千葉商科大学中退。
1998年 『 Twelve Y. O. 』 で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。
1999年 『 亡国のイージス 』 で第2回大藪春彦賞、 第18回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞、 翌2000年に第53回日本推理作家協会賞長篇を受賞。
2003年 『 終戦のローレライ 』 で第24回吉川英治文学新人賞、 第21回日本冒険小説協会大賞 日本軍大賞を受賞。
2005年 『 ローレライ （原作名：終戦のローレライ） 』、 『 戦国自衛隊1549 （原案：半村良氏） 』、 『 亡国のイージス 』 の三作品が映画化。
■ 原作者より

 　当たり前のことですが、 映画もゲームも製作には多大な手間暇がかかります。 設計図を描き、 人を集め、 土台からこつこつ造り上げてゆくという点では、 巨大な建築物の建造に似ているかもしれません。
　いわゆるマルチメディア展開を計画する場合、 まずは映画という巨大建築物の建造が始まるのを待ち、 全体の規模と完成期日が見えてから各媒体の仕込みを開始します。 この時、 雑誌やコミックなどのプリント媒体なら突貫工事もできないではないのですが、 映画と同じくらい手間のかかるゲームとなると、 その完成と映画の完成期日をシンクロさせるのには大変な困難が伴います。 映画と同時期に着工していない限り、 事実上不可能と言っても過言ではないでしょう。
　かと言って、 まだ海のものとも山のものともつかない段階で映画にコミットするのは難しい。 映画公開が終わった後でゲームが出るというパターンもありますが、 それでは相乗効果は生まれないし、 世間的に賞味期限切れになったところで発売するというリスクも発生して、 ゲームサイドにとってはあまりいい結果は得られません。 つまり、 両者の足並みが仲良くそろうのは奇跡に近く、 成功した事例は実は皆無に等しいのです。

　今回、 『 亡国のイージス２０３５　ウォーシップガンナー 』 をリリースするに当たって、 我々はその 「 奇跡 」 を手に入れることができました。 無論、 開発中の 「 ウォーシップガンナー 」 シリーズのシステムが流用できるという前提条件があってのことですが、 これを実現に導いたのは映画 ・ ゲーム両製作チームの多大な努力に他なりません。 原作者の立場としては、 この 「 奇跡 」 をなんとしてでも実りあるものにしたいという欲求を抑えられませんでした。
　映画と小説で語られる 『 亡国のイージス 』 は、 基本的には護衛艦を舞台にした人間ドラマです。海戦アクションを主体とした 「 ウォーシップガンナー 」 シリーズのシステムとは馴染まず、 ミスマッチとも捉えられかねない取り合わせなのですが、 ここで手間を惜しみ、 名前だけ冠して似ても似つかぬゲームを出すような真似をしたら、 せっかくの 「 奇跡 」 を腐らせることになってしまいます。
　この問題を解消する手段として、 最終的に案出したのがゲーム用に 「 続編 」 を立ち上げるというものでした。 『 ２０３５ 』 の 「 ２ 」 が大きいのは伊達ではありません。 これは新たに書き下ろされた 『 亡国のイージス 』 の正統な続編であり、 単なる映画の付属物ではない、 『 イージス 』 と世界観を共有する完全新作のオリジナルストーリーなのです。
　ここで語られる物語が、 映画 ・ 小説双方の 『 イージス 』 と共鳴しあい、 今から三十年後の未来まで世界を広げられた時、 「 奇跡 」 は次に繋がる 「 可能性 」 となって後続に託されることでしょう。 限られた時間と条件の中で、 すべてのスタッフがやれるだけのことをやった本作。 夏休み公開の映画と併せて、 ぜひゲームの新しい可能性を体感してください。

福井　晴敏

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協力： 福井晴敏 / 「亡国のイージス」 associates.